コラム
介護福祉士の仕事内容|仕事内容から取得すると便利な資格まで解説
介護職に就きたいと考えている人の中には、介護福祉士という職種に関心がある人もいるでしょう。介護福祉士はさまざまな役割を担うため、社会貢献度が高く、やりがいのある仕事です。
介護職の業務内容は多岐にわたり、幅広い場面での活躍が求められます。働くイメージを明確にするためにも、事前に仕事内容を把握しておきましょう。
今回は、介護福祉士の仕事内容を詳しく解説します。給料相場や、あわせて取得すると有利な資格も紹介するため、介護福祉士を目指す人は参考にしてください。
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1.介護福祉士とは?
介護福祉士とは、社会福祉士及び介護福祉士法にもとづく国家資格となります。専門職として自ら介護業務にあたる一方で、スタッフのマネジメントを行うなど、リーダー的な役割も担う点が特徴です。
高齢化が著しい現在では、介護の担い手である介護福祉士の需要が高まっています。下記は、2012年以降における高齢者数及び全体に占める割合の推移です。
2012年8月 | 2015年 | 2025年 | 2055年 | |
---|---|---|---|---|
65歳以上高齢者人口(割合) | 3,058万人 (24.0%) | 3,395万人 (26.8%) | 3,657万人 (30.3%) | 3,626万人 (39.4%) |
75歳以上高齢者人口(割合) | 1,511万人 (11.8%) | 1,646万人 (13.0%) | 2,179万人 (18.1%) | 2,401万人 (26.1%) |
高齢化の進行とともに要介護者数が増加するため、介護の担い手である介護福祉士は、今後ますます必要とされると予測できます。
1-1.介護福祉士とケアマネージャーの違い
介護福祉士と同じように、介護職には有資格者だけがなれる「ケアマネージャー」という職種もあります。
ケアマネージャーの正式名称は「介護支援専門員」です。介護福祉士とは異なり、介護サービスを受ける利用者に対して、間接的にサポートすることが特徴となります。ケアプランの作成、利用者の家族や市町村との連絡調整などが主な業務です。
就業先は高齢者施設だけでなく、委託介護支援事業所や地域包括支援センターもあります。ケアマネージャーと介護福祉士は連携しながら業務を行うものの、仕事内容は明確に異なることを認識しておきましょう。
2.介護福祉士の主な仕事内容
介護福祉士は幅広く介護にかかわる業務を行う職業であり、唯一の介護系国家資格です。そのため、介護福祉士にしかできない仕事も多数存在します。以下では、介護福祉士の仕事内容を解説します。
2-1.身体介助
利用者が生活動作を行う際、直接的にサポートする業務が「身体介助」です。身体介助の主な内容は下記の通りです。
- 歩行介助
- 食事介助
- 排泄介助
- 入浴介助
- 着替えの介助
- ベッドや車いすへの移乗介助
入浴介助や移乗介助などは、慣れるまで体力が必要となります。また、身体介助を行う際は利用者のペースにあわせることが大切であり、思いやりの心がなければ務まりません。
資格の有無にかかわらず実践できる内容ではあるものの、専門的な視点で行うことで、より安全で質の高いサービスを提供することが可能です。
2-2.相談・助言
利用者の家族の介護に関する相談に乗ったり、助言を行ったりするのは介護福祉士の仕事です。自宅介護における注意点や、福祉用具の選定・使用法などを説明することもあります。
要介護者を抱える家族は専門的な知識を持たないため、介護のやり方に不安を感じることが少なくありません。介護福祉士は利用者だけでなく、家族の精神的な支えになることも重要です。
2-3.マネジメント
介護福祉士は介護職のリーダーとしてほかのスタッフを指導・管理する立場です。そのため、スタッフのマネジメントも、介護福祉士の仕事です。タスク管理や教育指導のほかにも、細やかなコミュニケーションにより仕事に対する士気向上を図ります。
介護の現場は、どのような職場であってもチームワークが不可欠です。経験や性格が異なるさまざまな人たちを結束させるためには、コミュニケーション能力が必要となります。
3.介護福祉士の主な勤務先の種類|1日の仕事内容
介護福祉士の勤務先は、以下の通りです。
●介護福祉士の主な勤務先(2020年調査)
高齢者福祉関係 | 81.8% |
---|---|
障害者・障害児福祉関係 | 9.4% |
医療関係 | 6.1% |
その他 | 2.4% |
無回答 | 0.3% |
出典:社会福祉振興・試験センター「介護福祉士就労状況調査結果」
上記の表のように、介護福祉士の勤務先は大きく分けて「高齢者福祉関係」「障害者・障害児福祉関係」「医療関係」の施設となります。ここでは、介護福祉士の主な勤務先と1日の仕事内容について解説します。
3-1.高齢者福祉関係
高齢者福祉関係の施設は介護福祉士の主な勤務先です。高齢者福祉関係の施設は下記の通りです。
●高齢者福祉関係の施設
- 有料老人ホーム
- 特別養護老人ホーム
- デイサービス
- 介護老人保護施設
- グループホーム など
有料老人ホームや介護老人保健施設は、介護士が要介護者に対して介護、健康管理、リハビリテーションなどを行います。特別養護老人ホームは自宅での生活・介護が困難な高齢者が入居していて、日常生活の介助や健康管理などが行われています。
デイサービスは在宅の利用者に通所してもらい、生活面の介護、運動、レクリエーション、送迎などさまざまなサービスを提供する施設です。訪問介護施設は介護職員が利用者の居宅に訪問して、着替え・入浴・排泄・食事などの日常生活の身体介護や、買い物・洗濯・掃除などの生活支援を行います。
グループホームは主に認知症の人や日常生活に介護が必要な人が少人数のユニット単位で共同生活する施設です。グループホームでは入居者の能力に応じて自立した生活が送れるようにサポートしたり、レクリエーションをしたりします。
以下では、有料老人ホームで働く介護福祉士の1日の仕事例を紹介します。
8:00~8:30 | 出勤して夜勤スタッフから申し送りを受ける |
---|---|
8:30~10:00 | 朝食の片付け・排泄介助・部屋掃除・健康チェックなどを行う |
10:00~11:00 | シーツの交換や掃除を行う |
11:00~12:00 | 昼食を準備し、食事介助をする 食後の服薬チェックを行う 昼食を片付ける |
12:00~13:00 | 休憩時間 |
13:00~14:00 | 入浴介助・排泄介助を行う 利用者の見守りをする 書類作成作業をする |
14:00~15:00 | おやつを準備し、食事介助をする |
15:00~16:00 | レクリエーションを行う |
16:00~17:00 | デイサービスも提供している施設の場合、必要に応じて利用者の送迎を補助する 介護記録を作成して夜勤スタッフに申し送りし、退勤する |
3-2.障害者・障害児福祉関係
障害者・障害児福祉関係の施設の主な勤務先は下記の通りです。
●障害者・障害児福祉関係の施設
- 障害者グループホーム
- 施設入所支援
- 就労継続支援事業所
- 放課後等デイサービス
- 障害児入所施設 など
身体障害者療護施設では、身体に障害があり、日常生活で介護を必要とする人が生活しています。身体障害者療護施設で行われるのは、健康管理・治療、衛生管理、医療、介護、生活指導、リハビリテーション、就労支援などです。
障害者支援施設には日中活動系・施設系のデイサービスやショートステイ、居住系のグループホーム、訓練系・就労系の就労継続支援事業所、障害児支援施設などがあります。施設入所支援の1日の流れの例は下記の通りです。
8:00~8:30 | 出勤し、連絡事項を確認する |
---|---|
8:30~9:30 | 朝食準備・食事介助をする |
9:30~10:00 | 夜勤明けの職員から引継ぎを受ける |
10:00~11:30 | 各利用者に定められた支援プログラムに応じて活動支援をする |
11:30~12:30 | 昼食準備・食事介助をする |
12:30~13:30 | 休憩時間 |
13:30~15:00 | 午前に引き続き活動支援をする |
15:00~16:00 | 入浴介助・洗濯などを行う 利用者の希望に応じて外出や買い物を支援する |
16:00~16:30 | 利用者の日中の様子を記録する |
16:30~17:00 | 夜勤職員と引き継ぎミーティングし、退勤する |
また、季節ごとに行事を企画・実行することがあります。
3-3.医療関係
介護福祉士は病院やクリニックでも働いていて、「看護助手」と呼ばれています。主な業務内容は入院患者の身体的な介護、掃除やシーツ交換などの環境整備、看護師業務の補助です。病院で働く介護福祉士の1日の流れの例は下記の通りです。
7:30~8:00 | 出勤・朝礼・患者さんの状態などの引き継ぎをする |
---|---|
8:00~9:00 | 朝食の配膳・食事介助・排泄介助・口腔ケアを行う |
9:00~10:00 | 入浴介助・シーツ交換・病室の清掃・看護師の補助業務を行う |
10:00~11:00 | 患者さんの移送・排泄介助を行う |
11:00~12:00 | 休憩時間 |
12:00~13:00 | 昼食の配膳・食事介助・口腔ケアを行う |
13:00~14:00 | 看護師や理学療法士の補助業務・入浴介助を行う |
14:00~15:00 | 病室の清掃を行う |
15:00~16:00 | 介護記録の記入・看護師の事務作業の補助を行う |
16:00~16:30 | 申し送り事項を記入し、退勤する |
病院ではレクリエーションやイベント準備・進行があまり行われず、通所施設のような送迎業務もないでしょう。
4.介護福祉士のやりがいや魅力
介護福祉士のやりがいや魅力は、主に以下の3点です。
・感謝の言葉をもらえる
介護福祉士は利用者やご家族と関わる仕事のため、直接感謝の言葉をかけてもらえることが多くあります。人や社会に貢献していると実感できる仕事と言えるでしょう。
・利用者の変化が感じられる
介護福祉士は利用者の手助けをするだけではなく、自立して生活できるように見守りもします。介護福祉士として働く中で、利用者が今まで自分でできなかったことが手助けしなくてもできるようになる場面を見ることがあります。利用者の心身の状態によい変化が起きたことを間近で感じられることは、やりがいの1つと言えるでしょう。
・人生の先輩から多くのことを学べる
利用者は戦争や震災、戦後の日本の高度成長期などを経験してきた人生の先輩です。大変な時代を生きていた人の話は非常に貴重で、学べることが多くあります。利用者との関わりは、お金に代えられない財産になるでしょう。
介護福祉士の仕事は利用者の生活に深く関わっているため、ほかの仕事では感じることが難しいやりがいや魅力があります。
5.介護福祉士の給料相場
下記は、介護福祉士の平均給与をまとめた表です。
介護福祉士の平均月収(東京都平均) | 273,225円 |
---|---|
介護福祉士の平均年収(月収×12か月で計算) | 3,278,700円 |
介護福祉士の給料相場は幅が広く、中には年収500万円を超えるケースもあります。つまり、介護福祉士は働き方によって高収入を得ることも十分可能と言えるでしょう。また、介護福祉士の給料水準は年々上がっています。介護業界は待遇改善が進められている状況であるため、今後も介護福祉士の給料水準は上がると予想されています。
〇手当について
介護福祉士には、主に下記のような手当が支給される傾向です。
- 資格手当
- 夜勤手当
- 家族手当
- 住宅手当
- 処遇改善手当
国家資格ということもあり、資格手当は「介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)」や「実務者研修」よりも高く、月1万〜1.5万円が相場です。各手当の金額や付与される範囲は、就業先によって異なります。
〇収入を上げるためのポイント
収入を上げたい場合、待遇がよい施設を選ぶことや、夜勤を積極的に行うことがおすすめです。特に夜勤は給料が上がるため、稼ぎたい人は夜勤を選ぶケースも珍しくありません。
長期的な視野で考える場合は、経験を積みながら管理職を目指すとよいでしょう。役職手当が別途支給されるようになれば、収入がさらに安定します。
6.介護福祉士になるための方法
介護福祉士になるためには国家資格が必要です。ここでは、介護福祉士になるための3つの方法を解説します。
〇実務経験ルート
介護の仕事をしながら介護福祉士を目指すルートです。もっとも代表的な方法であり、経済的な負担が少ないメリットがあります。受験要件は下記の通りです。
- 実務経験が3年(1,095日)以上ある
- 介護福祉士実務者研修を修了する
介護福祉士実務者研修は全国さまざまな場所で実施されており、費用は約3万~20万円が相場となります。仕事が忙しい人は通信講座も検討しましょう。
〇養成施設ルート
高校を卒業後、福祉系の専門学校や大学に通うルートであり、最短で介護福祉士になれる方法です。必要な期間の目安は下記の通りです。
- 福祉系大学・社会福祉養成施設・保育士養成施設の卒業者は1年以上
- 普通科高校の卒業者は2年以上
費用は約100万~400万円が相場となっています。
〇福祉系高校ルート
福祉系の高校、もしくは福祉系の特例高校に通うルートです。主に介護業界への就職を見据えた中学生が対象となります。必要な期間は約3年、費用は約200万~400万円が相場です。
福祉系高校の卒業者は、国家試験において実技試験が免除されます。一方で、特例高校の卒業者は、実技・筆記試験の合格、卒業後9か月以上の実務経験が必要です。
6-1.介護福祉士が取得すると有利な資格
以下では、介護福祉士が取得すると有利になる資格を2つ紹介します。
(1)レクリエーション介護士 | 「高齢者に喜ばれるレクリエーション」を提供できる介護現場に笑顔を広げる資格です。資格を取得するには、日本アクティブコミュニティ協会が認定する機関で講座を受講する必要があります。 |
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(2)認知症ケア専門士 | 認知症ケアに関する資格です。専門知識を得ることで適切なケアが可能となり、教育指導の際にも深い理解を与えられます。認知症利用者が多い施設では、特に有利な資格です。 |
上記はいずれも実用性があり、転職する際にも役立ちます。介護福祉士の知識も大いに活かせるため、非常におすすめです。
7.介護福祉士についてのQ&A
介護福祉士を目指す中で、さまざまな点を疑問に感じる方も多いでしょう。以下では、介護福祉士を将来目指したい方がよく疑問に思う点について、Q&A形式で解答しています。
7-1.介護現場以外の仕事はある?
介護福祉士の知識と技術は、直接介護をしない職業でも求められています。介護福祉士が活躍できるおすすめな介護現場以外の仕事は、以下の通りです。
●介護現場以外の仕事
- 介護福祉士養成施設の教員
- 福祉系高校の教員
- 初任者研修や実務者研修の講師
- 福祉用具専門相談員
上記は直接介護現場に関わらないものの、介護福祉士の知識と技術を活かせる仕事です。
7-2.介護福祉士の仕事で大変なところは何?
令和4年度介護労働実態調査では、労働条件などの悩みや不安で最も多かったのが「人手不足」で、次に多かったのが「仕事内容のわりに賃金が低い」でした。
出典:介護労働安定センター「介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書」
介護業界は慢性的に人手不足のため、人が足りていない職場では一人当たりの仕事量が多くなります。また、介護職は重労働であるものの、給料が低いと言われることがあります。仕事内容と賃金のバランスがよくないと、モチベーションが下がる可能性があるでしょう。
ただし、近年は国が介護職の待遇改善のための施策を施行しているため、処遇改善加算による賃金の改善が期待できます。
7-3.介護福祉士に向いている人の特徴は?
介護福祉士に向いている人の特徴は、下記の3点です。
・観察力がある
介護福祉士は介護する相手に必要な支援を判断したり、普段の調子との違いなどを見抜いたりするための観察力が必要です。
・育成に興味がある
介護福祉士はサービス提供責任者や管理者、チームリーダーなど責任のある仕事を担当することがあります。責任者として学生の実習指導や新卒・新任職員の教育なども行うことになるため、人材育成に興味がある人は介護福祉士に向いています。
・仕事とプライベートを切り替えられる
介護は精神的・肉体的な負担がかかりやすい仕事です。仕事の負担を持ちこさないでプライベートとの切り替えができるスキルは、介護福祉士として働く上で重要です。
上記の特徴がある人は、介護福祉士に向いていると言えるでしょう。自分に特徴が当てはまっていたら、介護福祉士を目指すことをおすすめします。