コラム
介護福祉士の将来性は?働きやすさを実現する対策・今後の展望を解説
「人の役に立つ仕事がしたい」「就職に強い資格を持っておきたい」と考える高校生や社会人にとって、介護福祉士は将来の有力な選択肢の1つです。一方で「介護の仕事は大変そう」「給料が安いのでは?」と不安に思う人もいるでしょう。介護福祉士の需要は年々高まっており、働き方や収入面の改善も進んでいる職種です。
当記事では、介護福祉士の将来性や人手不足が続く中での待遇改善の動き、実際に目指すための支援制度について分かりやすく解説します。
1. 介護福祉士の現状と将来性が高いと言われる理由
介護福祉士資格は、高齢化が進む日本において今後も需要が拡大すると見込まれている国家資格です。ここでは、なぜ介護福祉士の将来性が高いと言われているのか、その背景を説明します。
1-1. 高齢化で介護ニーズが拡大している
日本では高齢化が急速に進んでおり、2024年10月時点で総人口1億2,380万人のうち65歳以上は3,624万人、割合にすると29.3%に達しています。内訳を見ると「75歳以上人口」(2,078万人/16.8%)が「65~74歳人口」(1,547万人/12.5%)を上回り、今後は要介護者がさらに増えることが想定されます。
これに伴い介護職員の必要数も増加しており、2026年度には約240万人、2040年度には約272万人が必要と見込まれています。実際に介護職員数は2015年の183.9万人から2023年の212.6万人へと増加しており、現場の需要拡大が数字にも表れています。
出典:内閣府「高齢化の状況」
1-2. 専門性が向上しスキルが評価される
介護現場では近年、認知症ケアや看取りケアなど、高度な判断と専門知識を要する支援が増加しています。認知症ケアでは、記憶障害や感情コントロールの難しさといった特性を理解した上で、尊厳を守りながら不安や行動症状を軽減する支援が求められます。
看取り介護では、延命治療に頼らずQOL(生活の質)を重視し、痛みや不安を和らげながら最期まで穏やかに過ごせるよう寄り添う力が必要です。こうした高度化する介護業務に対応できる介護福祉士は、単なる介助職ではなく専門職として社会的評価が高まっています。
1-3. 介護保険制度で安定して働ける
介護保険制度は、家族による介護負担の限界や介護離職の増加を背景に、介護を社会全体で支える仕組みとして2000年に創設されました。当初は訪問介護・通所介護・施設入所などが中心でしたが、その後の制度改正により認知症対応型サービスや小規模多機能型居宅介護、定期巡回・随時対応サービス、看取りを含む複合型サービスなど、さまざまな支援が整備されてきました。
そのため、介護福祉士が活躍できる現場は在宅・施設・地域支援と幅広く、制度が継続される限り安定して働ける職域が担保されています。介護保険が社会インフラとして機能していることが、介護福祉士の将来性の裏付けとも言えます。
1-4. AIやロボットと共存して活躍できる
介護福祉士の業務は、AIや介護ロボットの普及によりテクノロジーで補完する方向へ進んでいます。たとえば、移乗支援ロボットや見守りセンサー、音声入力による記録支援などの導入により、身体介護に伴う肉体的な負担や事務作業は減りつつあります。
一方で、今後増えると予測されるのは、利用者さんの状態を見極めながらのケアプラン作成、コミュニケーションを通じた心理支援、AIデータを活用した判断、多職種連携によるチームケアなど、人にしかできない専門的な業務です。テクノロジーが当たり前になる未来ほど、介護福祉士は「質の高いケアを担う人材」として存在価値が高まるでしょう。
1-5. 一生ものの資格で転職先も豊富にある
介護福祉士は介護分野で唯一の国家資格であり、日本全国どこでも通用する「名称独占資格」です。専門知識と技術を持って介護を行う職として法的に位置付けられているため、介護のプロフェッショナルとして評価されやすく、一度取得すれば更新不要の一生ものの資格として生涯活用できます。
実際に介護関係職種の有効求人倍率は2025年3月時点で3.97倍と、全職種平均の1.16倍を大きく上回っており、転職先が豊富で需要が非常に高いことが分かります。出産や育児などで一時的に離職しても再就職しやすい点は大きな安心材料と言えるでしょう。
2. 人手不足の中で介護福祉士が働きやすくなるための対策
深刻な人手不足が続く介護業界では、介護福祉士が安心して働き続けられる環境づくりが急がれています。ここでは、人手不足の課題に対して進められている具体的な支援策を紹介します。
2-1. 介護職へのイメージを改善する取り組み
介護職のイメージ向上に向けて、厚生労働省は全国規模で「介護のしごと魅力発信等事業」を実施しています。テレビ・SNS・イベントなどを通じて介護の実際ややりがいを発信し、従来の印象を覆す取り組みです。
介護の魅力を伝える人材を育てる研修、福祉分野の魅力を知ってもらうイベントやオンライン講座、学生を対象とした啓発プログラムなど、さまざまな形で啓発が行われています。介護施設や福祉施設で働く介護士自身が魅力を言葉にして発信する取り組みもあり、介護職の理解促進や関心喚起につながっています。
2-2. 離職防止と定着率を高める工夫
離職防止と定着率向上に向けて、国は介護ロボット・ICTの導入支援、保育施設の整備支援、悩み相談窓口の設置、オンライン研修・週休3日制などの多様な働き方のモデル事業など、現場の負担を軽減する環境整備を進めています。介護報酬改定では生産性向上の取り組みが評価対象となっているため、職場改善を後押ししています。
介護事業者側も、希望に応じた柔軟な勤務調整や残業削減・休暇取得促進、職場内のコミュニケーション活性化、ハラスメント防止など、人間関係と働きやすさの両面から離職対策を行うところが増えています。
2-3. 介護職員等処遇改善加算による待遇改善
介護職員等処遇改善加算とは、介護職の賃金向上を目的に介護報酬に上乗せできる制度です。従来は「介護職員処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」の3つに分かれていましたが、2024年度の介護報酬改定でこれら3加算が一本化され、「介護職員等処遇改善加算」として再編されました。
事業所は加算を賃金改善に充てることが義務づけられており、特に介護福祉士など経験・技能のある職員への配分強化が促されています。こうした仕組みにより、給与の底上げと処遇改善が継続的に進んでいます。
出典:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和7年度分)」
2-4. 補助金・助成金による支援
介護分野では、人材確保と学習支援のための補助金・助成金制度が整備されています。代表的なものが「介護福祉士修学資金等貸付制度」です。これは、養成施設や実務者研修に在学する人へ無利子で資金を貸与し、卒業後に介護福祉士として一定期間勤務すれば返済が免除される仕組みです。
入学準備金・就職準備金・国家試験対策費なども対象となります。資格取得への経済的な負担を軽減し、現場への定着をサポートする実効的な支援策です。
出典:厚生労働省「介護福祉士・社会福祉士を目指す方々へ(修学資金貸付制度のご案内)」
3. 介護業界・介護福祉士の今後の展望は?
「介護職は将来性が不安」と言われることもありますが、高齢者人口の増加と慢性的な人材不足を背景に、介護福祉士の活躍の場は今後さらに広がる見込みです。国としても処遇改善加算の拡充や労働環境の改革を進めており、給与・休暇制度・研修支援などの待遇は今後も段階的に向上していくと考えられます。
現場では外国人スタッフの受け入れや研修制度の強化、業務の標準化、残業時間の削減など、定着に向けた工夫も広がっています。介護ロボットなどのDXの導入による身体的・時間的な負担を軽減する取り組みも進行中です。こうした変化に伴い、ICTリテラシーや対人スキル、専門的判断力、問題解決力、継続的な学習力などを磨き、テクノロジー時代に対応できる新しい介護福祉士像が求められるでしょう。










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