コラム
診療情報管理士の仕事内容|医療事務との違い・給料相場も解説
診療情報管理士は医療現場の裏方を担当する職業であるため、「どのような仕事を担当するのか」「医療事務との違いは何か」などの疑問を持つ人もいます。診療情報管理士を目指すにあたり、給料相場や必要資格が気になる人もいるでしょう。
この記事では、診療情報管理士の仕事内容や将来性、給料相場について紹介します。診療情報管理士になるための方法も紹介するため、医療・福祉の現場で働く職員を目指している人は、ぜひ参考にしてください。
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1.診療情報管理士とは?
診療情報管理士とは、大学病院・総合病院などに勤務し、診療情報をデータベースに入力したり、さまざまな統計資料を作成したりする仕事です。診療情報管理士は、医療分野のIT化が進行する時代において重要性が高く、将来性の明るい仕事といえます。
厚生労働省の公表によると、2017年時点における電子カルテシステムの導入率は約5割にも上り、ベッド数400床以上の医療機関では約9割が導入している状況です。
今後さらにIT化が進行することで、診療情報管理士に対する需要がより高まり、多くの求人募集が出るようになるでしょう。
1-1.診療情報管理士と医療事務の違い
診療情報管理士と医療事務は、担当する仕事内容や働き方が異なります。
診療情報管理士は主にパソコンの前に座り、データベースへの入力や統計データの作成、分析を担当する仕事です。また、診療情報管理士の仕事には、情報処理能力やITスキルを要する内容も多くあります。
一方の医療事務は、主に医療機関の受付において、診療報酬明細書の作成や患者への対応、一般事務全般などを担当する仕事です。患者と接する機会の多い仕事であるため治療内容について質問を受ける機会も多く、一定のコミュニケーションスキルを要求されます。
なお、勤務先によっては診療情報管理士の仕事・医療事務業務の両方を任されるケースがあるため、就職・転職する際には注意しましょう。大規模な医療機関は比較的に診療情報管理士の仕事・医療事務の仕事の線引きが明確であり、専門性の高い業務に集中できる可能性が高いといえます。
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2.診療情報管理士の主な仕事内容
診療情報管理士は重要なデータを扱う専門職であるため、情報に不備のないよう注意深く業務をこなせる人が活躍できます。診療情報管理士の扱うデータには患者の個人情報・職場の機密情報が含まれるため、責任感の強さやコンプライアンス意識の高さも重要です。
診療情報管理士に限ったことではないものの、自分自身と特定の仕事の相性を測るためには、仕事内容を正しく把握する必要があります。診療情報管理士の主な仕事内容は、大きく分けて以下の3つです。
2-1.カルテの管理・データベース化
医療行為を記録したカルテ・検査記録の内容を精査し、国際疾病分類(ICDコーディング)に従って整理した上で、データベースに登録します。データベースに登録した情報を適切に管理し、必要に応じて情報開示することも、診療情報管理士の仕事です。
診療情報管理士の登録すべき情報が手元に届いていないときには、担当医師に連絡を取り、提出を促さなくてはなりません。登録すべき情報を収集して適切な形で記録・管理する一連の流れを担当することが、診療情報管理士の仕事であるといえるでしょう。
2-2.サマリー・点検報告書の作成
サマリーや点検報告書を作成する作業も、診療情報管理士の担当業務です。サマリーとは、退院時や1か月に1回のペースで作成する病歴などの記録を意味します。医師ごとの状況を定期的に調査し、サマリー作成率を計算したり、未記入分の提出を促したりすることが、診療情報管理士の仕事です。
点検報告書とは、退院サマリー作成率などの統計データをもとに作成される資料を意味します。診療情報管理士の作成した点検報告書は院長に提出され、チェックを受けます。
2-3.がん登録
がん登録を行うことも、診療情報管理士による重要な仕事のひとつです。がん登録で提出する情報には、以下のような内容が含まれます。
- 【1】がんに罹患した人の氏名、性別、生年月日
- 【2】届け出を行った医療機関名
- 【3】がんと診断された日
- 【4】がんの発見経緯
- 【5】がんの種類および進行度
- 【6】【2】の医療機関が治療を行っていれば、その治療内容
- 【7】【3】診断日における居住地
- 【8】生存確認情報
引用:国立がん研究センターがん情報サービス「『全国がん登録』をご存知ですか」
がん登録で提出した情報は都道府県単位で整理され、全国的なデータベースに登録されます。全国的なデータベースに登録された情報は、がんの実態を把握したり医療政策を立案したりする目的で活用されます。
がん登録を行うためには、個人情報保護法に関する研修を受講し、情報の適切かつ安全な管理方法について学ばなくてはなりません。研修を経て身に付けた知識を活用し、個人情報に配慮しつつがん登録を進めることが、診療情報管理士の仕事です。
3.診療情報管理士の給料相場
求人サイトの情報から推測される診療情報管理士の平均年収の推定値は、約320万~約380万円です。ただし、診療情報管理士の給料相場は勤続年数や勤務場所、医療機関の規模や雇用形態などに応じて異なるため、参考程度に考えることをおすすめします。
給与所得者の平均年収(※) 約436万円 診療情報管理士の平均年収 約320万~約380万円
診療情報管理士の給料相場は、ボーナス(賞与)の有無や支給額によっても変動します。住宅手当や家族手当、資格手当を支給する医療機関は多く、各種手当の充実した求人を選ぶことで、給料アップを図ることが可能です。
なお、上記の表の給与所得者の平均年収は、平均年齢が46.7歳・平均勤続年数が12.4年のデータであることに注意してください。診療情報管理士の平均年収は、一般的に勤続年数を重ねるごとに上昇します。同じ条件で比較した場合の平均年収は、上記の表のデータほど大きなギャップが見られない可能性も否めません。
4.診療情報管理士になるための方法
診療情報管理士になるためには原則的に、一般社団法人日本病院会指定の大学・専門学校で学び、所定の単位を取得した後、診療情報管理士認定試験に合格する必要があります。診療情報管理士認定試験の受験資格を得る方法には、指定校以外の大学・専門学校を卒業した後に通信教育を受講する方法もあるものの、学習期間が長くなり、遠回りです。
なお、診療情報管理士認定試験は民間資格であるため、無資格者・資格取得予定者が求人応募することも不可能とはいえません。ただし、認定試験に合格した上で就職活動を進めるほうが、基本的には有利です。
以下は、診療情報管理士認定試験の詳細をまとめた表です。
スケジュール 毎年2月中旬、年1回 会場 北海道から沖縄まで、全国15会場 試験時間 1時間 試験内容 基礎分野+専門分野で100点満点のマークシート方式
- 基礎分野(医療概論、臨床医学総論、臨床医学各論など)
- 専門分野(医療管理総論、保健医療情報学、医療統計など)
合格率(※) 62.4%(※2021年2月14日実施分)
※出典:一般社団法人日本病院会「第14回診療情報管理士認定試験の結果について(2021.4.1)」
診療情報管理士認定試験の出題範囲は幅広く、医学・医療分野から統計学、保健医療情報分野まで、さまざまな知識が問われます。診療情報管理士認定試験対策のノウハウが豊富な大学・専門学校などで効率的に知識を習得することで、合格率を高めましょう。
診療情報管理士認定試験のほか、以下のような資格を取得することも、就職活動を有利に進めるためのポイントです。
- がん登録実務初級者認定試験
- 医療情報技師能力検定試験
- 診療情報請求事務能力認定試験
- マイクロソフトオフィススペシャリスト(Word・Excel)
上記はいずれも、診療情報管理士の担当業務に直結する、重要度の高い資格といえます。大学・専門学校の在学中に資格を取得し、就職先から歓迎される人材を目指しましょう。
診療情報管理士を目指すなら!
まとめ
診療情報管理士の主な仕事内容や給料相場、就職活動で有利に働く資格について解説しました。診療情報管理士は、医療分野の情報化の進展とともに重要性が高まっている、将来性に期待の持てる職業です。
最短ルートで診療情報管理士になるためには、診療情報管理士認定試験に強い大学・専門学校で学び、資格を取得した上で就職活動に臨む方法がおすすめです。早稲田速記医療福祉専門学校は、診療情報管理士認定試験の合格率97%以上(2020年3月卒業生の実績値)を誇ります。「診療情報管理士を目指したい」という人は、ぜひ早稲田速記医療福祉専門学校のオープンキャンパスに参加し、診療情報管理科の実際の授業を体験してみてください。