コラム
医薬品登録販売者の仕事内容|やりがい・メリット・給料相場もまとめて解説
医薬品登録販売者は、いわゆる「薬剤師が不在でも薬局・ドラッグストアで一般用医薬品販売のできる専門家」です。2009年に行われた薬事法改正により医薬品登録販売者が新設され、近年では多くの薬局・ドラッグストアにおいて需要が高まっています。
しかし、2009年に誕生した比較的新しい資格であることから、医薬品登録販売者の概要についてよく把握している方はそれほど多くありません。
そこで今回は、医薬品登録販売者とはどのような仕事なのか分からない方に向けて、医薬品登録販売者の主な仕事内容と活躍できる職場から、医薬品登録販売者になるための方法まで詳しく解説します。
医薬品登録販売者を目指すなら!
目次
1.医薬品登録販売者とは?
医薬品登録販売者とは、2009年の改正薬事法により誕生した「一般用医薬品を販売できる専門家」です。
医薬品登録販売者が販売できる一般用医薬品は第二類と第三類のみですが、第二類と第三類の一般医薬品は一般医薬品の9割以上を占めています。そのため、医薬品登録販売者はほとんどの一般医薬品を販売できると言っても良いでしょう。
2009年に医薬品登録販売者の資格が誕生するまで、かつては薬剤師の人手不足が問題となっていました。しかし、医薬品登録販売者が誕生したことにより、薬剤師の負担は減少します。現在では多くの店舗で活躍できる医薬品登録販売者のニーズがより高まっています。
さらに近年の日本においては、特定医薬品の購入額の所得控除を受けられる「セルフメディケーション税制」も導入されるなど、セルフメディケーションを推進する動きがあります。
出典:厚生労働省「セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について」
セルフメディケーションとは、自身でけが・病気を判断し、自ら医薬品を使用するなどして治療に努めるという考え方であり、自身の健康は自身で守ることが求められる傾向です。
このセルフメディケーションの推進により、国民一人ひとりの「適切な医薬品の使用・リスク管理」が従来よりさらに重要となりました。しかし、医薬品の知識を豊富に持つ一般の方は多くありません。誤った医薬品の使用による健康被害を防ぐためにも、正しい医薬品の情報を届けられる医薬品登録販売者は重宝される存在です。
このように、薬事法の改正や健康への考え方の変化により、医薬品登録販売者の持つ医薬品知識は今後より重要視されるでしょう。
1-1.医薬品登録販売者と調剤薬局事務の違い
医薬品登録販売者と似た仕事として、「調剤薬局事務」が挙げられます。どちらも医薬品を扱う職業であることから、違いをよく知っていない方も多いでしょう。しかし、医薬品登録販売者と調剤薬局事務には大きな違いがあります。
医薬品登録販売者 | |
---|---|
主な仕事内容 | 一般医薬品の販売・説明 |
主な職場 | 薬局・ドラッグストア・コンビニエンスストア |
資格 | 「医薬品登録販売者」として勤務する場合、資格の保有は必須となる |
調剤薬局事務 | |
---|---|
主な仕事内容 |
|
主な職場 | 薬局 |
資格 | 「調剤薬局事務」として勤務する場合でも、資格の保有は必須ではない |
医薬品登録販売者の主な仕事内容は、第二類・第三類医薬品の販売と、お客様に対する医薬品の使い方やリスクの説明です。
一方で調剤薬局事務の仕事内容は、病院からの処方箋をもとに、調剤報酬の算出とレセプト(調剤報酬明細書)の作成・保険者への請求がメインとなります。いわゆる「お金」に関する業務が多く、調剤や投薬、医薬品の説明は行いません。
1-2.医薬品登録販売者と薬剤師の違い
医薬品登録販売者の仕事に興味がある方の中には、同じように医薬品を扱う職業である薬剤師との違いについて気になる方もいるでしょう。医薬品登録販売者と薬剤師には、以下のような違いがあります。
医薬品登録販売者 | |
---|---|
主な仕事内容 | 一般医薬品の販売・説明 |
主な職場 | 薬局・ドラッグストア・コンビニエンスストア |
資格 | 「医薬品登録販売者」として勤務する場合、資格の保有は必須となる |
薬剤師 | |
---|---|
主な仕事内容 | 薬の調剤・服薬指導・医療医薬品と一般医薬品の販売など |
主な職場 | 薬局・医療施設(病院や診療所を含む)・大学の研究機関・ドラッグストアなど |
資格 | 「薬剤師」として勤務する場合、資格の保有は必須となる |
薬剤師とは、医師の処方箋に基づいて医薬品の調剤を行い、お客様に医療用医薬品を提供できる資格職を指します。お客様への服薬指導や医師への疑義照会など、調剤に伴う業務も薬剤師の仕事の一部です。医薬品登録販売者では扱えない第一類医薬品の販売もできます。
一方、医薬品登録販売者は医薬品の調剤や医療用医薬品の提供はできません。一般用医薬品についても、第一類医薬品は扱えないことに注意しましょう。
ただし、一般用医薬品のうち第二類・第三類医薬品は9割以上を占めています。ドラッグストアなど、第二類・第三類医薬品を多く取り扱う勤務先では、医薬品登録販売者と薬剤師の仕事内容に大きな違いが見られない場合もあります。
2.医薬品登録販売者の主な仕事内容|活躍できる職場
ここまでで説明している通り、医薬品登録販売者の主な仕事内容は第二類・第三類医薬品の販売と、患者さんに対する一般医薬品の効果効能・副作用の説明です。医薬品にかかわる豊富な知識をもとに、患者さんに適切なアドバイスを行うことが求められる仕事と言えるでしょう。
医薬品登録販売者の主な活躍場所は幅広く、さまざまな店舗の求人があります。よくある職場は、ドラッグストア・コンビニエンスストア・調剤薬局です。ここからは、各活躍場所の仕事内容を詳しく解説します。
2-1.ドラッグストア
医薬品登録販売者の求人でも、最も多い店舗がドラッグストアです。ドラッグストアでは、一般医薬品の販売や接客がメインの仕事内容となります。
しかし、日用品や食品など幅広い商品を販売しているドラッグストアの場合は、さまざまな商品の品出し・陳列やレジ打ち、さらに在庫管理や発注も担当することも多々あります。
このように、ドラッグストアで働く医薬品登録販売者は、分野をまたいだオールラウンドな働き方を求められることが特徴です。
2-2.コンビニエンスストア
近年では、一般医薬品の販売許可を得ているコンビニエンスストアも増加傾向です。第二類・第三類医薬品が取り扱われているコンビニエンスストアでは、医薬品登録販売者の需要が高まっています。
コンビニエンスストアで働く医薬品登録販売者も、ドラッグストアで働く医薬品登録販売者と同様、医薬品以外の商品対応もこなす必要があります。特にコンビニエンスストアは医薬品以外の商品を求めて利用するお客さんも多いため、医薬品登録販売者としての専門性を活かせるケースは少ないと言えるでしょう。
2-3.調剤薬局
医薬品登録販売者は、調剤薬局でも大いに活躍することが可能です。処方箋をもとにした調剤業務は薬剤師の仕事で、医薬品登録販売者は主に受付・窓口業務を行います。そのほか、レセプト(調剤報酬明細書)の作成など調剤薬局事務に似たような業務をこなす必要もあるでしょう。
調剤薬局の場合、ドラッグストアやコンビニエンスストアに比べて営業時間が短く、残業も少ないことが特徴です。さらに、土日祝日が定休日となっている店舗も多くあります。そのため、平日に安定して働きたい方や、子育てと仕事を両立しなければならない方におすすめです。
3.医薬品登録販売者になるメリット
薬局やドラッグストア、コンビニなどで働く方が医薬品登録販売者の資格を取得することには、待遇アップやスキルアップなどのメリットがあります。就職・転職を有利に進めやすいため、自分のライフスタイルに合った働き方もしやすくなるでしょう。
ここでは、医薬品登録販売者になることで得られるメリットについて詳しく解説します。
3-1.資格手当による収入アップが見込める
勤務先にもよりますが、医薬品登録販売者の資格を取得している場合、勤務先から資格手当が支給されるケースも珍しくありません。医薬品登録販売者の資格を持っている方と持っていない方では、収入面での違いが生じる可能性があることを押さえておきましょう。
医薬品登録販売者の場合、資格手当は毎月5千~1万円支給されることが多いと言われています。資格手当だけでも、年間で6万~12万円の収入アップが期待できるでしょう。
3-2.就職・転職や昇給で有利になる
就職や転職を有利に進められることも、医薬品登録販売者の資格を取得するメリットの1つです。
医薬品登録販売者が扱える医薬品は第二類・第三類医薬品に限定されますが、一般用医薬品の9割以上を扱えるため、ドラッグストアなどで十分活躍できます。薬剤師と比較すると人件費を抑えられる傾向があることから、医薬品登録販売者の採用を積極的に行う企業も増えています。求人も多いため、有資格者は就職や転職を有利に進められるでしょう。
また、ドラッグストアなどの店舗において、管理職にあたる店舗管理者になるには医薬品登録販売者の資格を持っていることが必須です。医薬品登録販売者の資格を取得することで、昇進にも有利に働くでしょう。
さらに、医薬品登録販売者のニーズは医薬品を扱うコンビニやスーパー、ホームセンターなどでも高まっています。場合によっては、製薬会社の営業職などで資格を生かせるケースもあるでしょう。このように、幅広い場所で活躍できることは医薬品登録販売者の大きな魅力の1つです。
3-3.ライフスタイルに合った働き方を選べる
医薬品登録販売者は、全国すべての自治体で永続的に有効な資格です。結婚や出産、配偶者の転勤などでライフスタイルが変化した場合でも、働きたくなった際にいつでも資格を活用できるでしょう。誰でも取得を目指せるため、ライフスタイルが変わった後でも取得に向けてチャレンジすることもできます。
さらに、医薬品登録販売者は正社員だけでなく、アルバイトやパートといった雇用形態を選べることもポイントです。ライフスタイルに合わせてアルバイトやパートとして働きながら、将来的には正社員へのキャリアアップを目指すといったキャリアパスも選べるでしょう。
4.医薬品登録販売者のやりがい
医薬品登録販売者は、第二類・第三類医薬品のスペシャリストとして責任のある重要な仕事を任されることも多い職業です。働く上で「楽しい」と感じる場面も多く、大きなやりがいを感じられるシーンも多いでしょう。ここでは、医薬品登録販売者が感じることの多いやりがいを4つ紹介します。
・自分が考えた売り場で商品が売れたとき
医薬品登録販売者は、お客様への医薬品の販売や情報提供だけでなく、商品の陳列レイアウトやポップの作成など、売り場作りを任されることも珍しくありません。自分が担当した売り場からお客様が商品を購入していったり、店舗の売上が上がったりすると、商品を販売する楽しさや自分の仕事に対する自信を感じられるでしょう。
・お客様の役に立てたと実感できたとき
ドラッグストアなどで勤務していると、お客様から医薬品や健康に関する相談を受ける機会が多くあります。お客様の不安や課題の解決に向けてアドバイスや医薬品選びのサポートを行うと、後日「症状が緩和された」など感謝されることも少なくありません。お客様の役に立てたと実感しやすいことも、医薬品登録販売者の大きな魅力の1つです。
・医薬品の勉強が役に立ったとき
医学の知識・技術は常に進歩しており、新しい医薬品も次々に登場しています。医薬品登録販売者は、医薬品のスペシャリストとして既存の知識だけでなく新しい知識にも対応していく必要があるでしょう。これらの努力が実務に役立ったりお客様の喜びにつながったりすることで、仕事にやりがいを感じる方も多くいます。
・店舗責任者に昇進したとき
店舗責任者は、お店で働くスタッフをまとめるリーダーです。責任の大きな役職ではありますが、その分仕事のやりがいや自信の成長を感じやすいでしょう。
医薬品登録販売者は一般用医薬品の専門家として、接客から売り場作り、店舗運営など幅広い業務を担います。目に見える成果を実感しやすい業務も多いため、仕事のモチベーションも保ちやすいでしょう。
5.医薬品登録販売者の給料相場
下記は、一般的な給与所得者の給料相場と、医薬品登録販売者の給料相場を比較した表です。医薬品登録販売者の給料相場は、求人サイトをもとに算出しています。
給与所得者の平均年収(※1) | 約458万円 |
---|---|
医薬品登録販売者の平均年収 | 約350万~400万円 |
医薬品登録販売者の平均年収は、一般的な給与所得者の平均年収と比較してやや低い傾向です。なお、医薬品登録販売者の平均年齢は41.9歳・平均勤続年数が10.7年のデータとなっています。
医薬品登録販売者が月収を上げるためには、時給が高くなる深夜帯に勤務したり、店舗の管理者を目指したりすることが大切です。店長クラスなど責任度の高いポジションとなれば、さらなる高収入が期待できるでしょう。
6.医薬品登録販売者になるための主な勉強方法
医薬品登録販売者になるためには、各都道府県で実施される国家試験に合格する必要があります。国家試験を受けるにあたって学歴や実務経験、年齢による制限はなく、誰でも受験可能です。
医薬品登録販売者に合格するためには、専門知識を身につけるための勉強が必要になります。「独学」「通信教育」「通学」といった方法があるため、自分に合った勉強方法を選びましょう。ここでは、医薬品登録販売者になるための主な勉強方法について詳しく解説します。
6-1.独学で勉強する
医薬品登録販売者の試験はマークシート方式であり、知識を暗記すれば解答できる問題が中心となっています。市販の参考書や問題集などを活用すれば、独学でも合格を狙うことは十分可能でしょう。かかる費用は基本的に教材費のみであり、コストを大幅に抑えられるという点は大きなメリットと言えます。
一方、独学の場合は自分で学習計画を立てるなどの自己管理が必要となる点に注意が必要です。分からないことがあっても相談できる相手がいないため、学習を効率よく進めにくいこともデメリットと言えるでしょう。
6-2.通信教育で勉強する
働きながら医薬品登録販売者の資格取得を目指す場合は、通信教育を活用して勉強することもおすすめです。試験によく出る範囲・問題を中心とするテキストを使い、短期間で効率よく勉強できるので、働きながら無理なく資格取得を目指せるでしょう。
通信教育は試験合格に向けたサポート体制が充実している点も大きな魅力です。専門講師に質問できる環境を整備したり、添削サービスを提供したりする講座も多いため、通信教育を選ぶ際には内容を事前に確認しましょう。
6-3.通学で勉強する
自宅での学習が苦手な方や、1人で勉強するとモチベーションを維持しにくい方は、医薬品登録販売者の資格取得に向けた勉強ができる学校に通学するとよいでしょう。通学して勉強する場合、決められた日時に教室に行って講義を受けることで必ず学習を進められます。毎回の講義をしっかりと受講していれば、出題範囲の知識を一通り学習できるでしょう。
講師に気軽に質問できたり、同じ目標を持つクラスメイトと勉強を教え合ったりできる点も大きなメリットです。途中で挫折するリスクを低減できるため、試験合格に向けて最後まで勉強を頑張れるでしょう。
7.医薬品登録販売者が取得すると有利な資格
医薬品登録販売者は、下記の資格取得もしておくことで、転職先・就職先選びや面接、さらにキャリアアップにおいてさらに有利となります。
(1)NR・サプリメントアドバイザー認定試験 |
---|
個人の栄養状態を評価し、適切なアドバイスをすることができる資格です。サプリメントは消費者ニーズも高く、医薬品登録販売者の資格に加えてサプリメントアドバイザーのスキルがあれば、更なるキャリアアップにつながるでしょう。 |
(2)ビューティーアドバイザー |
---|
ドラッグストアでは、お客さんから化粧品に関する相談を受けることも多々あります。ドラッグストアで働く医薬品登録販売者は、化粧品・メイク関係のアドバイスができるビューティーアドバイザーの資格が有利となるでしょう。 |
このように、医薬品登録販売者に加えて何らかの専門知識を習得すれば、幅広い職場で重宝されるでしょう。活躍の場を広げたいという方は、他資格の取得をおすすめします。
まとめ
医薬品登録販売者は、2009年に薬事法が改正されたことにより誕生した「一般用医薬品を販売できるスペシャリスト」です。ドラッグストアやコンビニエンスストア、調剤薬局など幅広いフィールドで活躍することができ、受験資格の制限がないことから、人気の職業となっています。しかし、医薬品登録販売者の資格は国家試験となるため勉強は必須です。
医薬品登録販売者を目指すのであれば、「早稲田速記医療福祉専門学校」がおすすめです。早稲田速記医療福祉専門学校は、各業界で現役として活躍する先生による授業を受けられます。100%の就職実績もあり、資格試験だけでなく就職のサポートも充実です。医薬品登録販売者として将来活躍したい方は、ぜひ早稲田速記医療福祉専門学校の資料請求・オープンキャンパスをお申込みください。